日経新聞記事より
日本経済新聞社がまとめた2015年度の採用計画調査(最終集計)によると、主に外国人を対象とするグローバル採用は、製造業が前年度比41.7%増と大きく増える。アジアを中心とした海外展開を担う人材や、開発現場を引っ張る技術者を採用する意欲が高い。
クボタは2.5倍の約10人のグローバル人材の採用を目指す。欧米やアジアで建機や農機の販売を強化する。益本康男会長兼社長は「グローバル企業として事業を展開する上では多国籍な人材は不可欠」として採用に力を入れる。
荏原は中国や韓国出身のポンプ技術者を中心に2倍となる約16人を採用する。海外でプラントやインフラ受注が増えているほか、国内は機械工学を専攻した人材が不足しており、グローバル人材で穴を埋める。
IT技術者に的
電子部品メーカーのMARUWAはグローバル採用を本格化する。従来は欧米の販売子会社ごとだったが、本体で理工系の人材を中心に5人ほど採用する計画だ。電機分野ではワークスアプリケーションズが5割増の約150人に伸ばす。世界の著名な大学のIT技術者の採用を狙っている。
日産自動車は調査では未定としたが、「優秀な外国籍の学生や中途採用がいた場合には積極的に採用する予定」としており、今後も高水準で推移しそうだ。
一方、非製造業の採用は14.9%減る。イオングループが減らす影響が大きい。ただ、小売りやIT(情報技術)関連などでグローバル人材の採用意欲は高い。
イオンも高水準
イオングループはマレーシアなど海外出店の準備に伴う14年度の採用増による反動で2割減るものの、引き続き1000人規模を採用する計画。「今後も高水準の採用を続ける」としている。
今回の調査で、企業にグローバル人材の採用手法を聞いたところ、人材紹介会社を活用する企業が全体の37.4%を占めた。紹介会社は事前の試験や面接で学生を選別しており、初めてグローバル人材を採る企業の利用が多いとみられる。
外国人インターンの受け入れ(17.3%)、海外での説明会(16.8%)が続いた。その他、「海外大学との提携」(自動車関連機器メーカー)という回答もあった。
■私はこう見る
リクルートキャリアの岡崎仁美就職みらい研究所所長 企業のグローバル人材の採用熱は高まっており、特に製造業とサービス業の関心が強い。海外展開に加えて、景気の回復で各社の採用意欲が高まる中、国内で優秀な人材の確保が難しくなったことが背景にある。
ただ、外国籍の社員を受け入れる体制が整っていない企業は多い。グローバル人材を取り巻く課題のほとんどは本人と周囲のコミュニケーション不足が原因。早期離職を防ぎ、定着率を高めるには会社独特の仕組みや制度の狙いを理解してもらうことが重要だ。
転職情報サイトDODAの木下学編集長 転職市場は活況で、「プチバブル」ともいえる様相になっている。リーマン・ショック後に中途採用を増やしたのは、IT(情報技術)ベンチャーや一部の成長企業に限られていたが、約1年前から金融や製造業、建築など幅広い業種の企業が中途採用を増やし始めた。求人の年齢層も多様になっている。従来は35歳以上の転職は困難といわれていたが、ミドル層の引き合いも強い。景気回復で現場の人手不足が表面化している。
消費増税の影響で様子見の業界もある。住宅は昨年の採用増の反動もあり、しばらくは増やさないだろう。流通や外食も足元はやや慎重だ。ただ、全体として旺盛な求人は当面続き、人手を確保するために採用基準を落とす例もある。転職希望の登録者は増えても、今の仕事に比べて良い条件を求めており、慌てて転職する人は少ない。企業にとって、人材の確保は難しくなっている。