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文系学生の大部分が イヤでも「営業」に配属される事実を知っているか?

                                    


業種の研究とともに
「職種」のことも考えてみよう



12月,企業の採用広報活動がスタートし、15年卒のみなさんの就職活動が始まりました。


これからみなさんは、自己分析、業界研究を通して志望動機を明確にし、それぞれ希望する業界・企業へのアプローチを始めることになります。


多くの就活サイトでは、業界研究について、さまざまな記事を掲載します。みなさんはそれらを読んで、情報収集をされるでしょう。
漠然とした動機から出発し、情報収集をしながらそれが明確になるに伴って、個別具体的な企業名が浮かび上がります。


そう、みなさんの就活は、まずは対象業界をピックアップし、そのなかで志望企業を絞り込む、というプロセスをたどるはずです。


さて、そこで考えてほしいことがあります。業界というのは「事業の種類」を示しますが、もうひとつ、「職種」というものがあるのです。みなさんは意識しているでしょうか。


職種とは業界を問わず、企業の機能として共通するもので、営業、経理、総務、経営企画、広報、開発など、さまざまな種類があります。ひとつの企業は多くの職種の組み合わせからなり、それらが協力して事業目的を実現することになります。


もちろん、今は業種のことに関心が向かっているでしょう。それは当然のことです。


しかし、どんな会社で働くか、をイメージしながら、その会社でどんな仕事をするか、つまり職種のことも考える必要があります。


なぜかというと、その両者を考えてこそ、適職感の高い就職が可能になるはずだからです。


そして本連載では、さまざまな職種がある中で、営業という職種について解説したいと思います。


新卒の7割は

営業職に就くという現実


なぜ、営業を取り上げるか。


それは営業という職種が、学生の皆さんに、あまり理解されていない、と感じるからです。


もちろん、研究熱心な人なら理解しています。


営業はかなりクリエイティブな仕事である。

売上という数字で評価されるので、わかりやすく達成感がある。

営業という仕事は人脈が広がり、それによって自分が成長できる。

営業とは、自分を売り込む仕事でもある


その一方で、営業という仕事を誤解している方もたくさんいます。


営業=ノルマがきつい。だからつらく厳しそう。

人にペコペコ頭を下げてモノを買ってもらう。卑屈な感じがして嫌だ。

なにかモノを無理やり押し付けて、だますような感じがする。


ざっと考えついたところを挙げましたが、あなたの持っている営業のイメージは、どのようなものでしょうか。


営業に対するイメージや解釈がどうあれ、ハッキリしていることがあります。


特に文系学部のみなさん。みなさんのうち、おおむね7割強は就職すると営業部門に配属されます。理系の皆さんのなかでも営業部門に配属される人が多数います。


業種を問わず、それが現実です。


 「商品企画をやりたいです」、「広報部門を希望します」、「経営企画で自分の能力を生かしたい」。


みなさんは面接に臨んで、いろいろな希望を述べるはずです。そして、時に面接官と意気投合して、話が盛り上がることもあるでしょう。そのようにして内定をゲットする、という流れになります(話が盛り上がっても内定がもらえない、ということも、もちろんあります)。


そして入社して研修を受けて、配属が発表されますが、7割強は営業なのです。

「商品企画がやりたい、と言って話が盛り上がったじゃないか!」などとクレームをつけるわけにはいきません。ゆくゆくは商品企画をやることになるかもしれないが、そのためにも営業で商品知識を身につけ、基礎力をつけてもらう。これが大方の企業の言い分です。広報も経営企画も同じことです。


ですから、好き嫌いを言う前に、営業について、その仕事の特性ややりがい、厳しさ、仕事にまつわる喜怒哀楽を正しく理解しておく必要があるでしょう。


本連載のタイトルは、「できるビジネスパーソンは、みんな営業で成長した」です。


ちょっと大げさに感じるかもしれません。営業を経験することなく、なんらかの職能のスペシャリストとして成長した人も大勢います。


ただ、多くの新卒新入社員が配属されることになる営業という仕事は、成長の機会がきわめて豊富にある、ということは間違いありません。



営業マンと取材記者の

仕事の本質は同じである


ここで自己紹介をします。


私は新卒で出版社に入り、経済雑誌の記者として20年近く働きました。今は部署が変わり、企業の人材育成のサポートをする業務に携わっています。会社では採用の面接官も長年務めました。現在の仕事柄、大学の就職ガイダンスなどで学生の皆さんの前で講義をする機会もあります。


現在の業務では、社内研修で使用する教育教材や、内定者向けの媒体を作成することが中心で、主業務は編集、ということになります。


ただし、私の仕事は商品を作って終わりではありません。今は自分の作ったものを、自分で企業に売る、つまり営業も業務の一環です。


この仕事に移った時、私には戸惑いがありました。記者しかやったことない自分が、営業などできるのだろうか、と。ちょうど、今みなさんが抱いているかもしれない同じイメージを営業という仕事に感じていた、と言えるかもしれません。その時、私は45歳になっていました。


でも、始めてみてわかりました。


営業の仕事は、記者の仕事と似ている。というか、本質はまったく同じである。だから、自分が20年かけて培ったスキルが、そのまま生かせる。


なぜか。営業の仕事も記者の仕事も、相手とコミュニケーションを図り、相手の考えていることを理解しようと努めることが必須の要件だからです。

その目的と結果が、モノやサービスを売ることと、記事を書くこと、という違いはあります。ただ、そこに至るまでに行うべき行動、考えるべきこと、しなければならない努力は、基本的には同じなのです。


細かい違いを少し挙げるなら、記者の時には通常、1時間の取材時間をもらえましたが、営業訪問では原則として30分、という違いがありました。それも当然のこと、と受け入れてしまえば、どうということはありませんし、営業でも人間関係が深まれば、さまざまな組織内の問題解決に関する相談を持ちかけられたりします。30分の予定が1時間になり2時間になる、ということもしばしばあります。


                                          作者: 間杉俊彦 [ダイヤモンド社人材開発編集部副部長]