知らないと損する
就活生親子の数ある疑問にズバリ回答。あたふたしないために今から準備を。
「まだ連絡が来ませ」「学歴フィルターがかかっているみたいだ」「説明会の予約できましたか?」
毎年、企業の採用広報活動や選考が本格化すると、みんなの就職活動日記(みん就)や「2ちゃんねる就職板」といったネットの掲示板で書き込みが急増する。
学生にとって、企業の新卒採用活動は得体の知れないのだ。選考の目がいつ誰から向けられているか分からない。学生たちはうわさに翻弄され、時に疑心暗鬼になりながら、錯綜する一番の要因は、近年盛り上がりを見せる大学ごとのターゲティング採用にある。
ネット経由の応募が主流になった2000年代前半以降、大手企業を中心に学生が大挙してエントリーするようになった。一方、採用担当の人員は減らされる傾向にある。応募者全員の書類を見ることは物理的に不可能だ。そこで目をつけたのが採用する大学を絞るターゲティング採用だった。
大手メーカーの採用担当者は、「これまでは応募者一人ひとりをじっくり見てきたが、人員との兼ね合いで限界がある。ある程度のターゲティング施策はせざるを得ないだろう」とつぶやく。
われ先に優秀な人材を確保しようと、企業はあの手この手を使って効率的な採用活動を進めている。学生、そして親はどう備えればいいのか。ターゲティングの基準や手法は企業によってまだら模様とはいえ、現実の一端を知っているのと知らないのとでは大きな差になる。以下、Q&A形式で新卒採用の裏側に迫る。
Q1リクルーター面談の連絡が来た!これも面接なの?
A.立派な面接の一種です。評価は人事担当者に伝えられます。
「弊社の社員に一度あってみませんか?」
知らない番号からの電話でこう切り出されたら、それは大抵の場合りリクリーターだ。プレエントリー後、エントリーシート(ES)提出後など、リクルーターから連絡がくるタイミングは企業によってさまざまだ。時期としては2~3月。正式に選考が解禁される4月1日以降の面接始前に人数を絞っておきたい狙いがある。選考解禁前のため、建前上、志望動機を明確に聞くことはできない。
面談はあくまでも雑談の形式を取ることが多い。リクルーターは自社への理解を含めてもらえるよう説明しながら、学生の質問に答える。私的なOB訪問ではないので、学生側にも相応の準備が必要だ。
人数構成は1対1、1対複数、複数対複数など、企業によってまちまち。複数のリクルーターの間で評価が分かれた場合、よりしっかり見極めようと、面接に進むまでの面談回数も増える傾向にあるようだ。
今春、リクルーターとして活動した自動者部品大手の社員は、「休日に母校の大学付近まで出張して、学生たちと2回面談をした。一回目は選考にかかわる評価をせず、2回面は実質的な選考として面談した」と話す。企業理念を深めてもらった上で選考に参加してもらいたいのがとの理由だという。
リクルーターの動員に積極的なのは、学生には馴染みの薄いBtoBビジネスを主体とする企業に多いようだ。「インターネットを通じた採用が主流になり、身近で知名度の高い企業に応募が集中した。優秀な人材を獲得するには、少しでも興味を持ってくれた学生にいち早く接触する必要がある」と、鉄鋼メーカーの人事関係者は説明する。特に有能な人材で固めたい部門の採用にのみ、リクルーター選考を取り入れ会社もある。
最近は理系の女子社員によるリクルーターも増加中。女子学生にしてみれば、仕事に関して“ぶっちゃけトーク”ができる存在は心強く、企業理念も深まる。
リクルーターが接触する大学は限られている。つまり、選考の入り口に立てる学生も限らてるわけだ。前出の人事関係者は、「以前は東大や京大に絞っていたが、ここ最近多少広げている。ただ基本的には高学歴採用の方針だ」とも話す。
文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野惠子研究員はそのほとんどが何らかの形でリクルーターを活用していると考えて良い」と指摘する。
採用効率を上げるべく、企業のリクルーター活用は今年もますますすみそうだ。
Q2なぜあの企業の説明会は何回試しみても予約できないの?
別々の大学に通う、とある就活肩を並べていた。大手食品メーカーの採用説明会の予約開始時間を待ち構えているのである。そして秒針が12を目指した瞬間、2人は同時に「説明会予約」のボタンをクリックする。
だが、ここで明暗が分かれる。都内の有名国立大学に通う彼氏の画面には、各日程の横に表示された「予約」のボタン。中堅私立大学の学生である彼女がめの当たりにしたのは、ずらりと並ぶ「満席」を示す赤い文字。2人の間には気まずい空気が流れた。
これは実際におこった話である。大学名だけで就活生を選別する、いわゆる学歴フィルターが明確に可視化されたケースの一つだ。
これは時差告知と呼ばれるもので、定員に対する埋まり具合をみながら、徐々に告知を取り入れている採用担当は「就職情報会社からシステムの提供を受けている」と明かす。
HRプロの調査によれば、企業は自社で開く説明会よりも、大学で開催する企業セミナーを重視する姿勢が鮮明になっている。リクルートやマイナビが主催する合同説明会の費用対効果に疑問を抱く企業の増えている。不特定多数ではなく、意中の学生に効率よく接触したい意向が強まっているのだ。
こうした流れの中で、非ターゲット校の大学に通う学生はどうすればいいか。まずは、情報が集まる。大学のキャリアセンターに相談にいくなど、早め早めの行動開始が必要。有名企業の門をやみくもに叩くのではなく、過去の入社実績なども踏まえたうえで、自分に合った会社を探してみよう。
Q3インターンシップって内定に直結しているの?
欧米では、学生のうちからインターンとして働いた企業に就職する、という仕組みができている。
ひるがえって日本は、外資系などごく一部の企業を除き、採用プロセスにインターンシップを組み込む例はまだまだ少ない。
リクナビの岡崎仁美編集長は「新卒一括採用という効率的な仕組みが定着した以上、企業は新しい手法に手を出しにくい。インターンシップは一人当たりの採用コストをハネ上げる」と指摘する。
ただ、ソーシャルゲーム関連などIT企業を中心に、日系でもインターンシップでの内定出しは広がりるるある。
内定に直結しなくても、インターン生専用の説明会や一部選考の免除といった「特典」を受け入れるという。コストをかけたインターンシップで有望な人材を見つけたとなれば、企業が手放すはずはないだろう。
2016年卒の採用からは4年生の8月に選考開始となる。そうなるとインターンシップによる早期の囲い込みも増えるかもしれない。
Q4先輩社員との懇談会や質問会って、選考される場なの?
先輩社員との懇談会を開催した企業からこんなメールが送られてくることがある。
ある電機メーカーの選考を経験した20代の女性会社員は、「案内に従うまま懇談会に何回か通ったが、若手、中堅、役員、と回を追うごとに担当者の年次が上がっていった。それがひととおり終わると、いきなり最終面接で驚いた」と話す。
ある大手素材メーカーでは、社員に自由に質問できる「質問会」を開催している。こちらも選考経験者によれば、「実は選考のスタートだった」。社員側が学生の質問を逐次チェックしていたとみられる。通過者はWebテストの受験に進んだという。
このように学生の不意を突く選考があるのも事実だが、裏を返すと、日頃から良識ある振る舞いをしていれば焦ることはない。
選考とは関係のない懇談会や説明会でも、だれかれ構わず名刺交換しようとするなど、目に余る学生の行為を見つけると「ブラックリストに入ることもある」(採用支援の経験があるメーカー若手社員)。その逆もしかりで、熱心な学生への目配りも当然なされている。
より親密な説明会といえるのが、個別の大学で行われる学内企業セミナーだ。近年多くの企業が力を入れる。その大学のOB・OGが目をつけた学生は、一部の選考を免除されることもあるという。
Q5OB・OG訪問に来た学生を、社員が評価するって本当?
OB・OG訪問は、先輩社員の仕事に対する本音が聞ける貴重な機会だ。「あなたの仕事に興味がある」と言われて、会ってくれない人に利害関係なく会えるのは、学生のうちだけと言っても過言ではない。
4月の選考開始が近づく頃、OB・OG訪問の依頼がどっと押し寄せる企業がある。総合商社だ。面会の時間帯は大抵が昼休み。2月から3月にかけて、正午を回る頃には総合商社各社の受付ロビーに数十人は下らない数の学生たちが列を成す。ある種、異様な光景だ。
多くの学生からOB・OG訪問を受ける商社の社員たちは、会った学生に対する評価を人事部門に提出している。そうすると昼食代が経費として支給されるのだ。「学生の印象段階評価を社内システムに入力するようになっている」(大手商社社員)。特に、説明会などで登壇する社員は人事からの信頼が厚く、学生の評価も重視されるという。
商社以外でも、ある大手金融機関は東大や京大など有名大学出身社員に対し、大学のOB・OG名簿に連絡先を載せておくよう指示。OB・OG訪問に来た中で有望な学生がいれば引き上げるという。
「とりあえずたくさんのOB・OG訪問をすればいい」と勘違いする学生も一定数いるようだが、別の商社社員は「そういう学生に限って質問がおざなりなものばかりで、時間の無駄にしか思えないときも多い」とぼやく。
東洋経済週刊により