会社四季報で勝つ就活
就活生が企業について調べようと思ったら、まずは企業のホームページ(HP)を見ることだろう。しかし、そうしたHPには企業にとってPRしたい情報がたくさんアップされている一方、都合の悪い情報はほとんど掲載されていない。HPだけではその企業のリアルな状況がわからないのだ。
企業研究をするにあたっては客観的・中立的な情報が大前提。そこで役に立つのが会社四季報である。会社四季報というと株式投資をする人のための本というイメージが強いかもしれない。しかし会社四季報は企業情報の宝庫であり、就活での企業研究にももってこいなのだ。
会社四季報とは、日本のすべての上場企業の財務データ、業績予想、事業の状況、最新トピックまでをコンパクトにまとめた企業情報誌。約100人の記者が上場企業約3500社に個別取材し、約250人のデータ担当者が企業の財務データ収集・整理して作成している。東洋経済は取材対象の企業から掲載料を受け取っていないので、掲載企業に対しては中立的な立場にいる。読者にとって役立つ情報を提供することを第一に考え、企業のマイナス情報も多数掲載している。
多くの就活生にとっては、会社四季報は親しみにくいものかもしれない。難しい専門用語が使われ、細かな数字がびっしり並んでいるからだ。
ただ、就活生はすべて読む必要はまったくない。企業研究をするにあたっては、次の9カ所さえ押さえておけば十分である。
まずは業績の項目だ。四季報の左下に書かれている数字が、企業の業績推移と今後の予想を表している。特に①「売上髙」と
②「営業利益」に注目しよう。利益項目には営業利益、税引前利益、当期純利益といろいろあるが、営業利益が最も重要だ。営業利益とは本業によって稼いだ利益。自動車会社なら自動車を売って得た利益であり、土地売却など本業以外で得た利益は含まれていない。
売上髙と営業利益が共に増加トレンドにある企業が良い企業といえる。過去に一時的な業績悪化があったとしても、トレンドとして売上髙と営業利益が増加していれば、問題はない(数値の表記は100万円単位。たとえばトヨタ自動車の2013年3月期売上髙は22兆0641億9200万円を意味する)。
③「自己資本比率」は、財務の健全性を表す指標だ。この数字が大きいほど借金に依存していない会社であるということを意味する。何%以上ならばOK、という絶対的基準はないが、業界ごとに見ると、銀行、証券、損保といった金融は自己資本比率が低く、放送や製薬業界が高いといった傾向がある。自己資本比率をチェックするときは、同業他社と比較しよう。
社長=筆頭株主ならワンマン経営の可能性
④「株主」とは、その会社の株式の所有者を意味する。会社を設立して運営していくにはお金がががるが、株主とはこうしたおカネを拠出した人や企業である。おカネを出しているのだから、会社の経営方針や役員人事に対して関与する権利を持つ。最も多く出した株主を筆頭株主と呼び、経営にも大きな影響力を行使できる。
一方、⑤「役員」は実際に会社を運営する責任者だ(社長名は(社)の欄に記載)。特に社長には大きな権限があり、会社運営の最終的な決定は社長が行う。④の筆頭株主と⑤の(社)が同一人物である場合、ワンマン経営である可能性が高い。有名企業のワンマン社長はよくマスコミにも登場する。マスコミを通じて社長がどんな人で、どんな経営方針を持っているのかチェックしよう。成功しているワンマン経営者は著書を出版していることも多いので、著書を読んでみるのもお勧めだ。⑥「海外」というのは、海外売上比率を意味する。会社の全売上髙のうち、海外での売上髙がどの程度あるのかを示す。日本は少子高齢化が進んでいるため、今後経済が大きく成長することは難しいが、海外では人口が急増している。
国連の統計によると、世界人口は2012年には70億人に達し、25年には80億人を超える。とりわけBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やASEAN諸国の成長は目覚しい。途上国のイメージが強いアフリカも一部の国では経済成長が続いている。日本企業が成長を続けるには、こうした海外諸国でモノやサービスの販売を伸ばさなくてはならない。「海外」の数値が高い企業は、その点において成長余地があると言える。
⑦「設立」の欄には、文字どおり会社が設立された年と月が記載されている。設立年が古いのに⑧「従業員平均年齢」が低い企業は、社員の定着率が低い可能性がある。いわゆる「ブラック企業」を判別する一材料として念頭に置いておきたい。「従業員平均年齢」は従業員欄の右側のカッコ内に掲載されている。⑨「年」とは従業員平均年収のこと。仕事のやりがいも重要だが、収入も重要だが、収入が低すぎれば生活設計ができない。平均年収が高いということは、企業の利益水準が高いこと、すなわち営業が順調であることを意味する。また企業がいかに社員を大切にしているかの目安でもある。同じ業界内で比較すると、業界内の企業の序列と年収の順位は一致することが多い。
会社四季報に掲載の平均年収は、左の平均年齢時における年収を表す。平均年齢が低ければ、多少平均年齢が高いのに平均年収が低いとなると問題がある企業かもしれない。
東洋経済週刊により