~エントリーシート・面接編~
就職活動(就活)の幕が開いた。期間中はやるべきことも多く、様々な難所が待ち受けている長丁場のレース。内定ゲットに向けて直前に押さえておきたい、2つの分野「エントリーシート」「面接」について、役立つポイントを紹介しよう。
1.エントリーシート
複数内定を得ている学生のエントリーシート提出数は約30社とやや多め。その1社ずつに「ラブレター」を書くようなものだが、読む側は1通1通をじっくり読む余裕はない。「おっ」と思わせるコツをまとめた。
【ポイント1】 自己PRは「結果」でなく「思考や行動の過程」が大切
エントリーシート(ES)は、企業の採用選考に参加する学生が提出する応募書類。選考の第1段階として提出を求められるケースが多く、企業はESに書かれている内容を基に「応募者の人となり」を知ることになる。面接の際にも記入内容が質問の前提になるなど、選考においてESの重要度が極めて高いことを認識しておこう。
出題されるテーマは企業によって異なるが、「自己PR」「志望動機」「入社後にやりたいこと」は3大質問。このほか「学生時代に「力を注いだこと」や「困難を乗り越えた経験」などもよく出される質問なので、併せて押さえておきたい。
「自己PR」や「学生時代最も力を注いだこと」というと、サークルでの役職や資格の有無など「誇れる経験」を羅列する人が少なくないが、これはNG。企業が知りたいのは「どんな結果を出した人か」ではなく「どんな目的や意思を持ってどのように行動する人か」。「結果」ではなく、結果に至るまでどう感じ、頑張ったかという思考や行動の過程を具体的に書くことが重要だ。
【ポイント2】 志望動機は、企業と自分の関わりを考えて書く
「力を注いだことは、自分の中で『1番頑張ったこと』でなくてもいい。ネタをいくつか考えておいて、応募企業の志望理由に結びつくものを選ぼう」と言うのは福沢さん。頑張ったことを思いつかなければ、こだわってきたこと、やって良かったことなどでもいい。どうしても見つからない人は、「12月からでも何かを成し遂げることはできる。1つでもいいので、自分に自信が持てることを作って選考に臨もう」(小川さん)
「志望動機」は、その企業を選ぶに至ったストーリーを示すと、説得力が出る。「例えば『家で母親を手伝って祖母の介護をした経験』があれば、介護用品メーカーの志望に結びつくかもしれない。企業と自分の関わりをよく考え、自分の経験がどんな仕事への興味につながるかを考えることが大切」(福沢さん)
【ポイント3】 「会ってみたい」と思わせる分かりやすさを目指す
「志望動機」は、その企業を選ぶに至ったストーリーを示すと、説得力が出る
入社後にやりたいことは「細かい仕事内容まで具体的に書く必要はないが、企業研究で理解した内容をふまえ、関心のある領域や自分がやりがいを感じることを示そう」(福沢さん)。
ESは、何千通もの中から、採用担当者に「この学生に会いたい」と思わせるものにしなくてはならない。「大事なことは最初に書く」「見出しを付ける」などの工夫をして意欲を伝えよう。
ESの完成度を高めるには、他の人に読んでもらって客観的なアドバイスをもらうとよい。「友人同士で見せ合うのも有効。複数の友達の心に響かないなら、そのESはダメということです」(小川さん)
【 必須の「3大質問」書き方のポイント 】
(1)自己PR
「試合に勝った」などの結果ではなく、それを実現するまでのプロセスで、「何を目的に、どのような取り組みをし、何を得たか・どう成長したか」を具体的に書く。
(2)志望動機
「この業界をなぜ選び、この企業をなぜ選んだのか」という思考の流れをまとめる。社名を隠しても「○○会社への志望動機だ」とイメージできるかどうかがチェックポイント。
(3)入社後にやりたいこと
学生時代に打ち込んだことや強みを生かして、仕事にどう取り組み、何を実現したいかを伝える。「好きだから選んだ=現在」「やりたいこと=未来」と考えるとまとめやすい。
2.面接
面接対策面接で、緊張してしまうのは無理からぬことだが、自分を出せないまま落とされるのは不本意。面接の極意を押さえておこう。
【ポイント1】 「挨拶」「普通の会話」「周囲への配慮」を忘れない
面接対策としては、「服装・お辞儀・挨拶」が3大ポイント。清潔感のある服装で、きびきびとした動作を心がけ、明るい声で挨拶しよう
面接にはいくつか形式があるが、主なものは「個人面接」「集団面接」「グループディスカッション(GD)」がある。 「面接官が見ているのは、『仕事ができそうかどうか』だけでなく、『一緒に働きたい人かどうか』。大前提として、挨拶ができること、普通の会話ができること、集団面接やGDなどでは周囲への配慮ができることが大事」(渡辺さん)
難しく考えすぎる必要はないが、ベーシックなマナーは守れるようにしておきたい。特に「服装・お辞儀・挨拶」が3大チェックポイント。清潔感のある服装で、きびきびとした動作を心がけ、明るい声で挨拶するのが基本なのだ。
【ポイント2】 相手が何を聞きたいかをよく考えて話す
個人面接や集団面接でよく聞かれるのは、ESと同様に「自己PR」「学生時代に打ち込んだこと」「志望動機」「入社後にやってみたいこと」などだ。
文字数に制限があるESとは異なり、面接ではより詳しく具体的なエピソードの詳細や、その時に感じたことなどを会話の中で尋ねられることになる。特に「学生時代に打ち込んだこと」は詳しく聞かれることが多いので、自己分析を通してしっかり振り返り、面接の際に伝えたいポイントを整理しておこう。 「面接官はESでしか学生の情報を持っていないので、質問はそこからしか出てこない。面接前には必ずESを見直しておくこと。また、ESに書いたエピソードのディテールのうち、何を話したら相手が楽しめるかもよく考えて。『言いたいこと』ではなく『相手が聞きたいこと』を、『やりたいこと』より、『会社にとってどう自分が役立つか』が伝わることが重要」(福沢さん)
また、面接では挫折経験や困難に直面した経験もよく聞かれる。自分のネガティブな面を尋ねられることに戸惑ったり、話すことに抵抗を感じる人も少なくないが、「企業は、困難な局面でどのように物事に取り組み、克服しようとしたかを知りたくて質問している。苦労話ではなく自分の良さが伝わる話をしよう」(渡辺さん)
【ポイント3】 面接は「コミュニケーション」 丸暗記で話すのはNG
面接では話す内容を事前に想定しておくことが必要だが、準備をしっかりしようと意気込むあまり「考えうる質問に対する答えを文章にし、一字一句を丸暗記する」人がいる。だが、これは面接対策として最もやってはいけないパターンと言っていい。
面接官は、学生と会話をすることで人となりを見ている。暗記した文章を間違いなく話そうとする人の姿からは、「どんな人なのか、活躍してくれそうか」を感じ取るのは難しい。
面接は、「覚えたことをテストする場」ではなく、人と人が会って話す「コミュニケーションの場」。話のキーワード、伝えたいポイントだけ頭に入れておき、相手の質問をよく聞いて、その場で自然に「会話のキャッチボール」をすることが大切だ。
なお、面接は慣れないと不安なもの。緊張すると、自分らしい会話ができないことも考えられる。「いきなり本命企業の面接を受けるのは避けたい。早い段階で、面接のリハーサルができるような企業も受けておいたほうがいい」(福沢さん)
答えに詰まることもあるかもしれないが、社会人としてのコミュニケーション能力を見られていることを忘れずに。「分からないことが合ってもメソメソせずに頑張って答えられるか、あるいは素直に『調べていなくて申し訳ありません、教えていただけますか』と言えるかが大事。社会人とたくさん会って、大人と話す経験を積むのが面接突破の近道」(高松さん)
【 よく出る質問の対策 】
(1)自己PR
自分の強みを具体的なエピソードを踏まえて、簡潔に話す。その際、文字数に限りがあるエントリーシートと違って、テーマを絞らなくてもOK。その後の面接での会話・質問の糸口になるように、面接担当者に「質問のネタを渡す」といった気持ちで話すのがいい。
(2)志望動機
「他社ではなく、この会社に入りたい理由」を語る。面接前にエントリーシートに書いた志望動機を再読し、「その会社の何が魅力か」「なぜ、それを魅力と感じたのか」という、自分なりの判断基準を明らかにしておくことが肝心だ。
(3)学生時代に打ち込んだこと
自分の経験を基に「学生時代にどんなことを考えたか」「どんなことをしたか」を具体的に話す。その後、面接担当者は学生の特徴や能力を探し出すために、「なぜ?」「どのように?」といった質問を繰り返す可能性もあるので、あらかじめ話す内容を深く掘り下げておこう。
(4)あなたの挫折体験を教えてください
どのくらい自分が深く挫折したか、大変だったのかのお涙頂戴ストーリーになったり、そこからどのくらい素晴らしく復活したのかのサクセスストーリーになったりしがちだが、その「挫折」のすごさを求められているのではない。むしろ、挫折に向かい合ったとき、どういう行動をとったのか、それをどのように実践し、挫折を克服できたのか、また、挫折を克服したことで、どんな力を自分が発揮できるようになったのかを伝えよう。
携帯の動画を活用しよう
面接で「志望動機」などを話す際、1分~1分半にまとめるのが理想。時間内に話す練習を兼ねて、自分の姿を携帯の動画で撮影してみよう。冒頭に「えーと」と言うことが多いなど、自分でも気付かなかったクセもチェックできる。
3.面接(グループディスカッションの場合)
【ポイント1】 「他人への配慮ができるか」「聞く力」を見る
グループディスカッションが面接の間に行われることも多い。数人の学生が与えられたテーマについて議論し、結論を発表する過程を採用担当者がチェックする選考方法だ。 複数人になると、自然と仕切る人や、自分の意見をより強く主張しようとする人なども出てくるが、意外にも企業が評価しているのは、「他人の意見をきちんと聞き、それを正しく理解しているか」「自分の意見を他人に分かるように話せているか」という他者の存在への配慮。
「周囲にすごいことを言う人がいても気後れする必要はない」(渡辺さん)。それよりも、他者とうまく意見を交換し、結論に向かって行けるか、つまり「一緒に働いてストレスのたまらない社員になれるか」を見られているのだ。
対立する意見を述べるのは問題ないが、ほかの人を否定するような発言や、冷ややかな反応をするのは慎みたい。
■見られているポイント
対策1 簡潔に分かりやすく話すために「誰に、何を、どう言うか」を頭の中で整理し、まとめた上で発言。
対策2 周囲の意見を聞かずに自分だけ発言したり、黙り込んだりしないよう気を付ける。
【ポイント2】 発言しないのはダメ! 必ず自分の意見も言う
コミュニケーション能力は、発言回数だけでなく、「多様な意見をまとめる」「場の雰囲気を良くする」という面で評価される。気の利いた発言をしなければと焦ったり、いかに優れた意見やアイデアを出せるかに気を取られたりする必要はない。
われ先に意見を言おうとする態度は印象が悪いが、かといって「何も発言しないのは、存在しなかったのと同じ」(福沢さん)。従って、タイミングよく発言はしておく必要がある。どうしても波に乗れなければ「手を挙げて発言を求めるくらいはしておいたほうがよい」と福沢さん。
また、最近のテーマには「事業を黒字化するにはどうするか」などの実務的なテーマも増えつつある。発言するには、ある程度新聞やテレビのニュースなどを見て、一般常識を蓄えておくことも大事だ。発言したい内容が先に話す人とかぶる場合に備えて、ネタはできれば複数用意しておきたい。
女子学生のためのワンポイントアドバイス
集団面接やグループディスカッションでは、女子学生は「積極的に発言する」など、高い評価を得ることが多い。一方、個人面接などで、面接官から「なぜ○○?」「なぜ××?」と問い詰められると、圧迫面接だと思い込み何も言えなくなる人もいる。面接担当者がいろいろ質問するのは、知りたい理由があればこそ。冷静に、自信を持って臨んでほしい。
[日経WOMAN別冊「2015年度版女子学生のための就活バイブル」の記事を基に再構成]