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就活スタート、異才発掘へ知恵絞る企業
                                                                          

2015年3月卒の学生の就職活動が始まった。業績回復を背景に企業の採用枠拡大の意欲は強い。だが企業は短期間に大量の学生の中から選ぶ従来型の採用システムに限界を感じ、多様な人材をとろうと独自の採用手法に知恵を絞る。一方、大学側も「就職率」で人気が左右されることから学生の就活サポートに必死だ。16年卒からは就活解禁が大学3年生の3月に繰り下げられ、就活期間はますます短くなる。就活は今、新たな変革期に入ろうとしている。


 「彼は良くも悪くもビッグマウス(大口たたき)」。富士通で働く入社3年目の川野康さん(仮名)への上司評だ。自分のやりたいことを次々に口に出すためだが「最近そういう元気のある新人が少ない」と実は評価が高い。


 川野さんは大学サッカーで日本一になった経験を持つスポーツマン。飛び抜けた能力を評価する同社の「チャレンジ&イノベーション採用」で入社した。富士通はこうした「一芸入社」を11年春入社の採用から導入。スポーツの日本代表クラスや数学オリンピックの優勝者などの「才人」を毎年20人前後採用してきた。同社の豊田建・人材採用センター長は「エントリーシート(ES)と筆記試験を使う従来型採用では決してとれない人たち」と話す。


 日本たばこ産業(JT)は14年3月卒の新卒採用から、大学4年生の1月以降に選考する新しい採用を始める。


 ほとんどの新卒採用は3年生の12月に始まり4年生の夏場までに一段落する。留学生などを除き、秋冬まで就職が決まらない学生は「負け組」とみなされがち。だが「4年生まで部活動や公務員試験に専念する人の中にはとがった人材がいるはず」(嶋吉耕史人事部長)と実施に踏み切った。

                                                           

 企業は今、従来型採用の仕組みに限界を感じ始めている。12月から一斉に学生を集め、自己PRを書き連ねたESと筆記試験・面談で判断するやり方は、大勢の学生をさばき短期間で選ぶという点では効率的。ただ「ES対策」「筆記試験対策」といったノウハウ本がちまたにあふれる。似たような人ばかり選ばれる弊害も生み出した。


 就職支援サイト(ナビサイト)も同じ課題に直面している。ナビサイトは数十万人の学生の情報を集めて企業に提供。従来型の採用システムを支えてきた。


 だが、多様な人材を求める一部の大手企業は、自社で採用のホームページを持ったり、大学内で就職説明会を開いたりしてナビサイトへの依存を減らそうとしている。大手のマイナビ(東京・千代田)の三上隆次マイナビ編集長は「一部企業はナビサイトへの全面的な依存を改めて、様々な採用手法を探っている」と話す。


 「もっと手間をかけよう」。OKIは12年度の新卒採用から集団面接を廃止し、個人面談のみとした。集団面接で学生1人にかけられる時間はせいぜい10分。表面的な質問で合否を判断せざるを得なかった。


 近年は内定後の辞退率が高かったほか、配属先から新人への苦情が増えていた。人事部の井下典部長は「人材を見極められなかったのが原因」と振り返る。かといって、一芸入社などでは必要な採用数を確保できない。従来型採用の枠組み中で工夫するしかない。


 今では1人の学生に人事担当者2~3人がつき、30分間みっちり話をする。約300人の学生の面談を終えるのにほぼ1カ月かかる。その間人事担当者の休日は一切無い。部下からは悲鳴が上がるが「優秀な学生をとるには時間をかけるしかない」(井下人事部長)と割り切る。


 多様な学生をとりたいという理想と、多数の人材を短期間で確保しなくてはいけない効率性の間でベストの答えはあるのか。企業の模索は続く。